「軽井沢に移住したい。でも、仕事はリモートで続けられるのか」——移住を考えるとき、ここが最後まで残る不安だと思います。
わが家は2024年10月に東京から軽井沢へ移住し、夫婦ともフルリモートの自営業として、中軽井沢エリアの賃貸戸建てで働いています。私はサービス系の仕事をしており、基本はリモートですが、2週に1回程度は東京でミーティングがあります。妻も同じくフルリモート。つまり平日の日中、この家では2人分のWeb会議が普通に走っています。
先に結論を言うと、軽井沢で夫婦フルリモートは成立しています。ただ、1年半以上働いてみて分かったのは、語るべきリアルが「自然が近くて集中できる」ではないということです。実際に効いてくるのは、回線の開通待ち、停電への備え、夫婦同時会議の部屋割り、冬と夏の運用、そして車。この記事では、その実務を順番に書きます。
まず結論:速度は足りる。問題は「開通待ち・停電・運用」
| 項目 | わが家の実感 |
|---|---|
| 回線速度 | 平日昼のWeb会議の時間帯でも下り200〜300Mbps程度。速度で困ったことはない |
| 開通までの期間 | 引越しシーズンと重なり、申込から開通まで2ヶ月弱。ここが最大の落とし穴 |
| 携帯電波 | 自宅・ツルヤ・風越方面など生活圏はおおむね問題なし。森へ入ると弱くなる場所はある |
| 停電 | 2026年6月に約30分の停電を経験。速度より「電源の備え」が盲点だった |
| 夫婦同時の会議 | 作業部屋1つ+リビングの部屋割りで成立している |
| 冬 | リビングの暖房をつけっぱなしにして、朝からそのまま仕事に入る運用 |
| 夏 | 通信より渋滞が実害。アウトレット方面へ出るなら朝イチ前提 |
| 上京 | 2週に1回・片道6,000円前後。「通勤」ではなく「出張コスト」として見る |
| 車 | 車なしのフルリモート生活は、かなり条件を選ぶ |
順番に説明します。
光回線:速度より「開通までの時間」が落とし穴
わが家はドコモ光。開通まで2ヶ月弱かかった
自宅の回線はドコモ光です。速度には満足していますが、移住時にいちばん誤算だったのは、申込から開通まで2ヶ月弱かかったことです。引越しシーズンと重なり、工事の予約がなかなか取れませんでした。
これはわが家が特別遅かったわけではなさそうです。ドコモの公式案内でも、引越しに伴う開通工事は時期や設備状況によって時間がかかる場合があるとされており、繁忙期は1ヶ月以上待つケースも案内されています。工事費も、派遣工事の内容によって数千円〜数万円の幅があります(金額・条件は変わるため、契約前に公式サイトで確認してください)。
フルリモートで移住するなら、教訓はひとつです。物件が決まったら、入居日から逆算して、回線はすぐに手配する。開通までの空白期間はスマホのテザリングでしのげなくはありませんが、Web会議が多い仕事だと、数週間その状態が続くのはかなり厳しいと思います。
速度は足りている
肝心の速度は、平日昼のWeb会議の時間帯でも、わが家では下り200〜300Mbps程度出ています。ZoomやGoogle Meet、Slack、クラウドストレージを同時に使っても、速度が原因で困った記憶はほとんどありません。
これは、公開されている実測データとも大きくズレていません。ユーザー投稿型の速度測定サイト「みんなのネット回線速度」の集計(2026年7月時点・直近3ヶ月)では、軽井沢町の光回線の平均は下り248Mbps・上り196Mbps・Ping20ms前後。Google Meetの1080pビデオ会議で使う帯域は参加者1人あたり最大3.6Mbps程度(Google公式ヘルプ)とされるので、平均値ベースでは桁が2つ違う余裕があります。「軽井沢は山だからネットが遅いのでは」という心配は、光回線が引ける場所に住む限り、実態とは違いました。
ただしこれは「わが家の住所では」という話です。同じ軽井沢町内でも、設備状況は場所によって違います。
反省点:家探しの段階で、住所単位の確認をしなかった
正直に書くと、わが家は物件探しの段階で、住所単位の回線確認まではしていませんでした。結果的にドコモ光が問題なく使えたので事なきを得ましたが、フルリモート前提の移住なら、これは内見の前後で必ずやるべき確認だったと思います。
NTT東日本も、提供エリア内であっても設備状況によって利用開始まで時間がかかる場合や、利用できない場合があると案内しています。軽井沢は別荘地や森の中の物件も多く、「町としては提供エリア」でも「その一軒」がすぐ使えるかは別問題です。
いま家探しをするなら、次の確認をおすすめします。
- 光回線事業者の提供エリア判定に、物件の住所を入れて確認する
- 携帯4キャリアのエリアマップで、物件の住所を確認する
- 管理会社・大家に「光コンセントの有無」「過去に光回線を引いていたか」「引込工事の許可が必要か」を聞く
- 可能なら内見時に、自分のスマホでスピードテストを回してみる
軽井沢の賃貸は物件数が少なく、決断を急かされる場面もあります。回線確認を内見チェックリストに最初から入れておくと慌てません。家探しの流れは軽井沢の賃貸のリアルに詳しく書いています。
携帯電波:生活圏は問題なし。森は別
携帯の電波は、わが家の生活圏——自宅、ツルヤ、風越公園方面——では、大きな不満はありません。日常の買い物や送迎で電波に困る場面は、ほぼないと思ってよいです。
ただし、森の方へ入ると弱くなりかける場所はあります。別荘地の奥や山際では、同じ町内でも電波の入り方がかなり変わると聞きます。物件が森の中にある場合は、内見時にその場で電波を確認するのが確実です。
意外と助かるのが、外で作業する選択肢です。町の公共Wi-Fi「Karuizawa-Free-Wi-Fi」が役場や図書館など町内13拠点で使える(1回60分・大規模災害時は登録なしで開放)ほか、わが家は月2〜3回キャンプに行きますが、キャンプ場も管理棟やコテージ周辺にWi-Fiを用意しているところが結構あります。ただし森の中は地形や木の影響を受けやすいので、「キャンプ場にWi-Fiがあることは多いが、サイト全体で安定するとは限らない」くらいの期待値が現実的です。仕事を持ち込むなら、電波の入るサイトかどうかを予約時に確認した方が安全です。
腰を据えて外で働きたい日は、時間制ラウンジやコワーキングが確実です。町内の選択肢は作業できるカフェ・ワークスペースまとめにまとめています。
停電:速度より盲点だった
軽井沢でフルリモートをするうえで、回線速度より盲点だったのが停電です。
わが家は2026年6月に、30分ほどの停電を経験しました。幸い仕事中ではなかったため実害はありませんでしたが、初めてのことで、正直、何の準備もしていませんでした。もしWeb会議の最中だったら、かなり焦ったと思います。
報道を見る限り、軽井沢町内の停電は珍しいことではないようです。2025年7月には一時約2,040戸が停電したと報じられ、2026年に入ってからも5月・6月に1,500戸を超える規模の停電が伝えられています。山あいの町なので、雷や倒木、雪の影響を受けやすい面はあると思います。冬の停電は凍結防止帯が止まるという別の問題もあるので(詳しくは冬のリアル)、フルリモート家庭にとって電源は、通信と同じレベルの生活インフラです。
わが家がこの経験のあとに整えた(整えつつある)備えは、次のとおりです。
- スマホのテザリングを、いつでも使えるように設定しておく
- モバイルバッテリーを常に満充電にしておく
- ノートPCは、会議前に充電しておく癖をつける
- 余裕があれば、ルーター用の小型UPS(無停電電源装置)やポータブル電源を検討する
- 最悪の場合に移動できる作業場所(コワーキング・ラウンジ)を把握しておく
大げさに見えますが、「停電したら会議ができない家」と「30分なら普通に乗り切れる家」の差は、道具を少し揃えるかどうかだけです。
夫婦同時リモートの運用
仕事場所は「作業部屋1つ+リビング」
わが家には、専用の作業部屋が1つあります。夫婦2人がフルリモートなので、理想を言えば個室が2つ欲しいところですが、実際は作業部屋1つ+リビングの組み合わせで運用しています。会議の有無に合わせて場所を入れ替えれば、今のところ大きな問題はありません。
移住前の家探しでは、「寝室が足りるか」はたいてい確認しますが、「2人分の仕事場所が取れるか」は意外と見落とします。夫婦フルリモートなら、間取り図の段階で「会議が重なった日にどこへ分かれるか」まで想像しておくと失敗しにくいです。
会議が重なった日は、部屋を分けるだけ
夫婦で同時刻に会議が入った日は、片方が作業部屋、もう片方がリビングへ移動します。それぞれイヤホンを使えば、音被りはある程度避けられます。
これは正直、軽井沢だから特別困るという話ではありません。都内のマンションで夫婦リモートをしていても、まったく同じ「部屋割り問題」は起きます。違いがあるとすれば、軽井沢は戸建てが基本なので、同じ家賃感覚でも部屋数と距離を確保しやすいことです。生活音が会議に乗りにくいのは、戸建ての地味なメリットでした。
冬:部屋を暖め直さない運用にする
冬の軽井沢は、朝がかなり冷えます。11月頃から最低気温が氷点下の日が出てくるので、「朝イチで冷え切った仕事部屋を暖める」運用だと、始業がつらくなります。
わが家は、リビングの暖房をつけっぱなしにして、朝からそのまま仕事に入れるようにしています。仕事部屋を毎朝ゼロから暖めるのではなく、メインで使う空間の温度を落としすぎない、という考え方です。軽井沢の冬は「家を冷やし切らない」が基本運用で、これは仕事にもそのまま当てはまりました(光熱費の実額は生活費の記事に書いています)。
見方を変えると、フルリモートは軽井沢の冬と相性が良いです。路面が凍結した朝に、無理に外へ出なくていい。「外出しない日を自分で作れる」ことは、冬の軽井沢では通勤がある暮らしに対する明確なアドバンテージだと感じます。
夏:実害は通信ではなく渋滞
夏の軽井沢で仕事に効いてくるのは、通信ではなく渋滞です。
特にアウトレット周辺は、夏休みや連休は非常に混みます。駐車場も朝イチでないと停めにくいので、わが家は「アウトレット方面に用があるなら朝イチで動く」が鉄則になりました。平日リモートの人でも、昼休みに軽く買い物へ、という東京の感覚でアウトレット方面へ出ると、想像以上に時間を取られることがあります。ショッピングプラザや町の公式も連休時の渋滞や駐車場混雑の案内を出しているくらいなので、体感だけの話ではありません。
夏はこのほか、湿気が仕事道具(PC・書類)に効いてきます。これは夏の湿気・カビ対策にまとめました。
上京と新幹線:月2回なら「通勤」ではなく「出張」
私は2週に1回程度、ミーティングのために東京へ行きます。片道の実費はだいたい6,000円前後。現行の通常料金は東京〜軽井沢で自由席5,600円・指定席6,130円(通常期。2026年3月の運賃改定後)なので、体感とも合っています。えきねっとには、指定席が200円引きになる新幹線eチケットや、列車限定で10〜30%引きになる「トクだ値」の設定もあります(割引率・対象列車は変動します)。月に2往復なら、交通費は月2万円台半ばというイメージです。毎日通勤するには重い金額ですが、月2回なら「必要な出張コスト」として割り切れる範囲だと思っています。
自宅から軽井沢駅までは、車で通常15分ほど。冬は路面を考えて20分ほど見ています。東京のように「駅まで徒歩+電車」ではなく、**「駅まで車+駐車場+新幹線」**という移動です。軽井沢駅周辺には町営駐車場があり、時間貸しで利用できます(料金は改定されることがあるため、町公式で最新を確認してください)。
しなの鉄道(中軽井沢・信濃追分方面)も使ったことはありますが、東京の電車の感覚でいると待ちます。日中は1時間に1本、多い時間帯でも2本程度(2026年3月改正ダイヤ時点)なので、時刻表を見てから動くのが前提です。実際に新幹線で通勤している知人からも、「電車は必ず時刻表を確認してから動く」と聞いています。
なお、この記事は「フルリモート+たまに上京」の働き方の話です。週3〜5日の新幹線通勤はまったく別物で、定期代も月13万円前後(時期により改定あり)と桁が変わります。毎日の通勤前提で軽井沢を考えている人は、定期代・会社の通勤手当の上限・終電の早さまで含めて、慎重に検討した方がよいと思います。
車なしでリモートワーク移住は成立するか
結論から言うと、車なしの軽井沢生活は、かなり条件を選びます。フルリモートで通勤がないなら車も要らないのでは、と考えたくなりますが、実際は逆で、通勤がないぶん生活のすべてが「家の周りでの移動」になります。
- 軽井沢駅の周辺に、日常使いしやすいスーパーが充実しているわけではありません。住民の日常の買い物は中軽井沢寄りのツルヤ軽井沢店(長倉・駐車場486台)などが中心で、駅前生活とは動線が違います
- 町内循環バスは3路線・大人100円で使えますが、本数とルートに制約があり、日常の足というより補助的な交通手段です
- タクシーは東京と比べると圧倒的に少なく、「どこでもすぐ拾える」感覚ではありません。2024年3月からタクシーアプリ「GO」が町内のタクシーに導入されましたが、台数そのものが限られる事情は変わりません
- 冬は路面が凍結するため、自転車は現実的ではなくなります
独身・夫婦のみで、駅徒歩圏に住み、買い物は宅配中心——という条件なら成立の余地はありますが、子育て世帯や犬のいる家庭、買い物量の多い家庭は、車前提で考えた方が安全です。わが家は車2台で、これは正直、手放せる気がしません。エリアごとの車事情は軽井沢・御代田・佐久の比較でも触れています。
宅配は生活インフラ
その代わり、宅配にはかなり助けられています。わが家の場合、配達員さんが家を覚えてくれて、置き配で対応してくれることも多いです。ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便とも置き配サービスを公式に案内しているので、在宅時間が長いフルリモート家庭とは、そもそも相性が良い仕組みです(事前の会員登録や申込みが前提のサービスもあり、クール便や代引きなど置き配にできない荷物もあります)。
車で買いに行く回数を減らせるという意味で、軽井沢のリモートワーク生活では、ネット通販と宅配は「便利」ではなく生活インフラに近い存在だと感じます。
自営業・経営者目線のコスト整理
会社員のテレワーク移住記事ではあまり語られませんが、自営業・経営者として移住すると、コストの見え方が少し変わります。
- 通信費は生活費ではなく、仕事のインフラです。回線と携帯の品質を削る選択肢は実質ありません
- 上京コストは固定費になります。わが家は2週に1回の上京で月2万円台。頻度が週1になれば月5万円前後と、打ち合わせの持ち方がそのまま経費に響きます
- 自宅で仕事をする場合の通信費・電気代などの経費按分は、業務利用分を合理的に説明できる範囲で、という一般的な考え方があります。具体的な処理は税理士に確認するのが安全です
- 郵便は、転居届を出せば旧住所宛の郵便物を1年間転送してもらえます(法人の場合は登記や届出も絡むため、こちらも専門家に確認を)
移住の生活費全体は軽井沢移住の生活費にまとめているので、あわせて読んでもらうと、仕事コスト込みの全体像がつかめると思います。
よくある質問
軽井沢の光回線は遅くないですか?
わが家(ドコモ光)は平日昼でも下り200〜300Mbps程度で、Web会議中心の仕事で困ったことはありません。公開されている町内の実測データでも、光回線の平均は下り248Mbps(2026年7月時点の集計)です。ただし設備状況は住所単位で違うため、物件ごとの確認は必須です。
開通までどれくらいかかりますか?
わが家は引越しシーズンと重なり、申込から開通まで2ヶ月弱かかりました。公式案内でも繁忙期は1ヶ月以上かかる場合があるとされています。物件が決まったら最優先で申し込み、開通までの間はテザリング等でしのぐ計画を立てておくと安全です。
停電は多いですか?
体感で「頻繁」とまでは言いませんが、わが家は2026年6月に約30分の停電を経験しました。町内では1,000〜2,000戸規模の停電が報じられることもあります。テザリング・モバイルバッテリー・充電の習慣という最低限の備えがあるだけで、仕事への影響はかなり減らせます。
車なしでリモートワーク移住はできますか?
かなり条件を選びます。駅徒歩圏・宅配中心・単身か夫婦のみなら余地はありますが、スーパーの動線、冬の凍結、バスとタクシーの少なさを考えると、子育て世帯や犬のいる家庭は車前提が現実的です。
新幹線通勤とフルリモート、どちらが現実的ですか?
働き方によります。わが家のように「フルリモート+2週に1回の上京」なら、交通費は月2万円台で無理なく回っています。週3〜5日の新幹線通勤は定期代だけで月13万円前後(改定あり)になるため、会社の通勤手当や勤務形態とセットで考える必要があります。
まとめ:回線は「引ければ」十分。勝負は運用
軽井沢で夫婦フルリモートは、成立します。1年半以上働いてみて、速度が理由で仕事に支障が出たことは、ほぼありません。
ただし、それは「光回線が引けて、開通を待てて、停電に備えて、夫婦の部屋割りができて、車がある」という前提の上に成り立っています。移住前に確認すべきことを一言でまとめるなら、**「回線の速度」ではなく「その物件で、いつから、安定して働けるか」**です。
- 物件ごとに、住所単位で回線と電波を確認する
- 入居日から逆算して、回線を最優先で手配する
- 停電と会議バッティングの「運用」を先に決めておく
- 車と冬の移動まで含めて、働く1日を想像しておく
ここまで確認して納得できるなら、軽井沢は「自然の中で働ける」以上に、働き方の自由度がそのまま暮らしの質になる町だと思います。移住そのものの向き不向きは向いている人・向いていない人も、あわせてどうぞ。
※ 本記事のわが家の体験(回線の開通期間・速度の体感・停電・上京頻度など)は、2024年10月の移住から2026年7月時点までのものです。町内の回線実測値は「みんなのネット回線速度」の2026年7月時点の集計(ユーザー投稿ベースの参考値)、Web会議の帯域はGoogle公式ヘルプ、開通工事の期間はNTTドコモの公式案内、新幹線運賃はJR東日本の2026年3月改定後の額、停電は信濃毎日新聞等の報道、公共Wi-Fi・循環バス・交通対策は軽井沢町の公式情報、置き配・郵便転送は各社の公式案内を参照しています。いずれも変更される可能性があるため、最新は各公式サイトでご確認ください。情報は2026年7月3日時点です。
