軽井沢の夏は涼しい。これは本当です。東京のように、外へ出た瞬間に汗が噴き出すことはほとんどありません。

ただ、移住して分かったのは、「涼しい」と「乾いている」はまったく別の話だということです。

わが家は、田んぼと道路に面した、比較的開けた場所に建つ賃貸戸建て(90㎡台)に、夫婦と小さな子ども、犬2匹で暮らしています。森の中の別荘地と比べれば、日当たりも風通しもある方です。それでも、下駄箱の革靴、クローゼットの奥、押入れの布団は、東京の感覚のままでいると確実にやられます。

東京の夏の湿気が「身体がつらい湿気」だとすれば、軽井沢の湿気は「モノがやられる湿気」です。外は快適なのに、家の奥・収納・布団・靴箱が、静かに湿っていきます。

この記事では、実際に軽井沢で暮らすわが家の体験をもとに、湿気とカビのリアル、やられやすい場所、効いた対策と効かなかった対策、そして家探しの段階で見ておくべきポイントを書きます。

まず結論:軽井沢のカビ対策は、掃除より先に「湿度管理」

やっておくこと怠ると起きること
湿度計をリビング以外にも置く(寝室・収納・洗面所)リビングは快適なのに、収納の中だけカビが進む
梅雨入り前に除湿機を用意する7月に下駄箱を開けて、白くなった革靴と対面する
収納・下駄箱・押入れに空気の通り道を作る閉めっぱなしの場所から順にカビ臭くなる
家具を壁から数センチ離す表からは見えない家具の裏だけが黒ずむ
引越しの段ボールを収納に使わない箱が湿気を吸い、中の紙類までカビ臭くなる
換気は天気と湿度計を見てから雨や霧の日に窓を開けて、湿気を招き入れる

軽井沢の湿気対策で問われるのは、こまめに掃除できるかではありません。湿度を「体感」ではなく「数字」で管理できるかです。

ここからは、数字・やられやすい場所・対策・季節・家選びの順に、具体的に書いていきます。

軽井沢は、数字の上でも本当に湿気る町

まず公的なデータから確認します。気象庁の平年値では、軽井沢と東京の月平均相対湿度は次のとおりです。

軽井沢東京
6月85%75%
7月87%76%
8月87%74%
9月89%75%
10月87%71%

夏から秋にかけて、軽井沢は東京より10ポイント以上湿度が高い月が続きます。しかも平均気温は東京よりずっと低いので、蒸し暑さとしては感じにくい。「涼しくて快適なのに、湿度計を見ると70%を超えている」という日が、軽井沢では普通にあります。

カビとの関係も、数字で押さえておくと対策の基準になります。文部科学省のカビ対策資料では、カビは相対湿度70%前後から繁殖し始め、75%を超えると速度が上がり、90%では短期間で目に見えるレベルになるとされています。また、建築物環境衛生管理基準では、室内の相対湿度の目安は40〜70%です。

つまり軽井沢の外気は、夏から秋にかけて、そもそも「カビ側の湿度」に入っているということです。

わが家の湿度計は、部屋によってこれだけ違う

わが家では、リビングだけでなく、寝室・クローゼット・洗面所にも湿度計を置いています。部屋や天気で差はありますが、暮らしの中で見てきた感覚は次のとおりです。

  • 晴れた日の日中のリビング:55〜65%前後。快適です
  • 雨の日、窓を閉めた部屋:65〜75%前後まで上がります
  • クローゼットや下駄箱、北側の部屋:リビングより5〜10ポイント高く、70%を超えてくる感覚です
  • 除湿機を回している部屋:60%前後まで落ち着き、体感がはっきり変わります

ここで重要なのは、リビングの湿度計だけを見ていても、収納の中は分からないということです。リビングが60%で快適でも、閉め切ったクローゼットの中は70%を超えていることがあります。カビが出るのは、いつも「見ていない場所」でした。

「涼しいから窓を開ければ乾く」が通用しない日がある

東京の感覚だと、湿気がこもったら窓を開けて換気、が正解でした。軽井沢では、これが半分正解、半分危険です。

外気の湿度が高い日──雨の日、霧の日、雨上がりの朝──に窓を開けると、外の湿気を家に招き入れるだけになります。わが家も一度、雨の日に「換気しなきゃ」と窓を開けて、むしろ部屋の湿度計の数字が上がったことがありました。

軽井沢の換気は、天気と湿度計を見てからです。晴れて乾いた日に一気に開ける。雨や霧の日は開けすぎない。この使い分けを覚えるだけで、家の湿り方はかなり変わります。

危ないのは、リビングではなく「閉めっぱなしの場所」

軽井沢の湿気で本当に警戒すべきなのは、毎日過ごすリビングではありません。空気が動かない、閉めっぱなしの場所です。わが家の経験と、町内で見聞きした話をあわせると、やられやすい場所は決まっています。

  • 下駄箱の奥:靴を詰めていると空気が動きません。玄関は外気に近く、雨や霧の日の湿気をそのまま持ち込みます。革靴、あまり履かない冠婚葬祭用の靴がとくに危ない
  • クローゼットの奥:とくに外壁側・北側・1階。扉を閉めっぱなしにすると、リビングより湿度が高くなります。服そのものより、壁側・床側・収納ケースの裏が先にやられます
  • 押入れ・布団収納:布団を詰め込むと湿気の逃げ場がありません。「来客用布団を入れっぱなし」はかなり危険です
  • 窓枠・サッシ・カーテン裏:冬の結露だけでなく、夏〜秋も空気がよどむ場所は湿ります。レースカーテンの裾や窓枠の角が黒ずみやすい
  • 家具の裏:壁にぴったり付けた本棚やチェストの裏。表面はきれいなのに、動かしたら裏だけカビ臭い、というパターンがあります
  • 洗面所・脱衣所:浴室の湿気、洗濯物、犬のタオル、子どもの服が重なる場所です。換気扇を止めるとすぐ湿度が上がります
  • シンク下・床下収納:湿気とニオイがこもりやすく、紙袋や段ボールを入れるとカビ臭の発生源になります

共通しているのは、どれも「普段目に入らない場所」だということです。軽井沢で怖いのは、リビングのカビではなく、開けたときにはもう手遅れになっている収納の中でした。

わが家が実際にやられたモノ

正直に書きます。わが家も、最初の夏に何度か失敗しました。

革靴。梅雨前に対策をしないまま7月に下駄箱を開けたら、あまり履かない革靴が白っぽくなっていました。東京では下駄箱に入れっぱなしでも何ともなかったので、完全に油断していました。

革のバッグ。東京の感覚のまま布袋に入れてクローゼットの奥に置いていたものを、久しぶりに出したらカビ臭くなっていました。使わないバッグほど空気に触れないので、実はリスクが高い。高いものほどしまい込む、という習慣が裏目に出ます。

引越しの段ボール。引越し後、段ボールをそのまま収納代わりに使っていたら、箱自体が湿気を吸って、中の紙類までカビ臭くなりました。紙は湿気を吸います。軽井沢では、段ボールを収納に使わない方がいいです。

犬のタオル。雨の日に濡れた足を拭いたタオルを洗濯カゴに入れっぱなしにしたら、翌日にはかなりニオイが出ていました。東京より乾きにくいぶん、「あとで洗おう」の放置時間が短くしか許されません。

どれも、東京では起きなかったことです。生活習慣を変えたつもりはないのに、環境が変わるとモノがやられる。これが「軽井沢の湿気はモノがやられる湿気」という意味です。

効いた対策と、効かなかった対策

ひと夏やってみて、効果がはっきりしたものと、過信しない方がいいものが分かってきました。

効いた対策

  • 湿度計を複数置く:リビング・寝室・クローゼット・洗面所。対策の起点はすべてここです。「なんとなくジメジメする」ではなく「この収納は70%を超えている」と分かると、行動が早くなります
  • 除湿機:いちばん効果が見えやすい対策です。洗面所・寝室・クローゼット前で回すと数字がはっきり落ちます。そして溜まった水を捨てるたびに、軽井沢の湿気を「重さ」で理解できます
  • サーキュレーターの併用:除湿機だけより、空気を動かした方が効きます。クローゼットの扉を開けて中に風を送る、家具裏や押入れのような空気が止まる場所に風を当てる、という使い方です
  • クローゼット・押入れを閉め切らない:見た目は悪いですが、効果はあります。とくに雨が続く週は、少し開けておくだけで違います
  • すのこ:布団の下、押入れ、収納ケースの下に。「床に直接モノを置かない」「床から浮かせる」が軽井沢の収納の基本だと感じています
  • 家具を壁から離す:3〜5cmでも空気の通り道ができます。本棚・チェスト・犬のケージは壁にベタ付けしない。家具裏のカビは発見が遅れるので、最初から離しておくのが安全です
  • 段ボールを早く処分する:収納に使わない。保管もしない。紙は湿気とニオイと虫の原因になります

過信しない方がいい対策

  • 除湿剤だけ:下駄箱や小さな収納には有効ですが、部屋全体の湿度を下げる力はありません。大きな収納には1個では足りず、水が溜まったまま放置すると逆に不衛生です
  • 窓開け換気だけ:前述のとおり、晴れて乾いた日限定です。雨・霧・秋雨の日は湿気を入れるだけになります
  • エアコン冷房だけ:涼しくはなりますが、湿気が残る日があります。軽井沢では気温がそれほど高くないぶん、冷房より除湿・ドライ運転の方が体感が変わる日が多いです
  • 収納に詰め込む:服や布団、子ども用品が多い家ほど要注意です。空気の通り道がない収納は、除湿機を回しても奥まで効きません。「片付けたつもり」が、カビの原因になります

除湿機は「家電」というより「インフラ」

わが家のような開けた立地でも、除湿機は最低1台、本気で対策するならリビング用と寝室・収納まわり用の2台体制が現実的だと感じています。日当たりが悪い家や森の中の家なら、2台以上を前提に考えた方がよさそうです。

稼働のリアルも書いておきます。雨が続く日は、除湿機のタンクは1日1回は普通に満水になります。室内干しをした日や霧っぽい日は、1日2回捨てることもあります。4L前後のタンクなら、梅雨から秋雨のあいだは「朝捨てて、夜また捨てる」日がある、という感覚です。

だからこそ軽井沢では、タンク式の水捨てが要らない排水直結タイプや、湿度の高い時期だけ自動で動く除湿・換気機器が別荘や住宅でよく使われています。留守がちの家や別荘では、水捨ての手間が現実的なボトルネックになるからです。

気になる電気代は、試算するとこうなります。消費電力200〜400Wクラスの除湿機を、目安単価31円/kWh(家電公正取引協議会の公表値)で24時間×30日回すと、計算上は1台あたり月4,500〜9,000円前後。実際は自動運転で止まる時間があるので、体感としては1台あたり月3,000〜8,000円程度の増分を見ておくと現実的です。2台体制なら、湿気の強い月は電気代が1万円前後上がる可能性があります。

冬の光熱費が月5万円前後になることと比べればインパクトは小さいですが、軽井沢は「夏は光熱費が安い町」でもありません。冬は暖房費、夏は除湿費。年間の生活費で見ておくべき項目です。詳しくは軽井沢の生活費のリアルにまとめています。

犬がいる家は、湿気対策がそのままニオイ対策になる

わが家には犬が2匹います。暮らしてみて分かったのは、犬がいる家ほど湿気対策の効果が分かりやすいということです。

犬用ベッド、ブランケット、タオルは湿気を吸いやすく、被毛とホコリがケージ下や家具裏に溜まると、湿気と混ざってカビとニオイの温床になります。水飲み場のまわり、トイレシートの置き場、雨の日の足拭きタオルも同じです。

逆に、除湿機を回すようになってから、犬のニオイ自体がかなり軽くなりました。ニオイの原因の多くは湿気とセットだったようです。犬と暮らす予定で軽井沢への移住を考えている家庭は、「湿気対策=ニオイ対策」だと考えておくと、家の中の快適さが変わります。犬との軽井沢暮らし全般は犬と暮らす軽井沢のリアルにまとめています。

同じ軽井沢でも、開けた場所と森の中で湿気は違う

冬のリアルでも書きましたが、軽井沢は立地によって暮らしの条件がかなり変わります。湿気はとくにそうです。

わが家は田んぼと道路に面した開けた立地で、日当たりと風通しがあるぶん、家全体がカビ臭くなるような湿り方はしていません。田んぼ側から朝露や霧の湿気を感じる日はありますが、「うちは開けているから大丈夫」と思っていると、閉め切った収納だけが静かにやられます。開けた立地でも、下駄箱・クローゼット・布団・家具裏は別問題でした。

一方、森の中の別荘地は条件が変わります。木に囲まれた家は日が入りにくく、風が抜けにくい。地面や落ち葉、苔の湿気が残りやすく、夏でも涼しいぶん、乾きにくい。別荘として使われてきた家は、カーテンや雨戸、収納を閉めっぱなしにする時間が長いので、なおさらです。森の中に住む知人からも、除湿機は台数を増やして常時運転が前提、という話を聞きます。

森の中の家は、雰囲気は本当に魅力的です。ただ、住む家として選ぶなら、「涼しい」より先に「乾かない」を考えた方がいい、というのが暮らしてみての実感です。エリアごとの環境の違いは軽井沢のエリア比較も参考にしてください。

家探しの段階で、湿気は見抜ける

湿気対策でいちばん効くのは、実は入居後の除湿機ではなく、湿気が抜ける家を選ぶことです。わが家の経験から、内見でここを見ておけばよかった、というポイントをまとめます。

部屋がきれいに掃除されていても、収納を開けると「湿気の履歴」が残っています。

  • 玄関と収納を開けた瞬間のニオイ。「ムワッ」とした空気、古い木のニオイ、湿った布っぽいニオイは要注意
  • 押入れ・クローゼットの壁・床・天井。すのこの跡や置きっぱなしの除湿剤があれば、過去に湿気で困っていた可能性があります
  • サッシのゴムパッキン、窓枠の角、カーテン裏の黒ずみ
  • 壁紙の浮き、巾木まわりの黒ずみ、家具を置いていた跡
  • シンク下・洗面台下・床下収納のニオイ。床下点検口があれば開けてもらう
  • 1階北側の部屋の空気感。日中でも暗い部屋がないか
  • 家の外まわり:敷地の水はけ、苔の多さ、雨どいの詰まり、隣地の木が近すぎないか
  • 浴室・洗面所の換気扇の強さと、24時間換気が動いているか(吸気口が塞がれていないかも)

そして、管理会社や大家さんに聞けることもあります。「除湿機は必要ですか」「夏の室内の湿度はどれくらいですか」「過去にカビで退去時のトラブルはありましたか」。答えの歯切れも含めて、判断材料になります。

軽井沢の賃貸戸建ては、築年数だけでは判断できません。冬は断熱と日当たり、夏は風通しと収納の状態。季節の裏側まで想像して内見する必要があります。夏に内見する人は冬を、冬に内見する人は夏を、意識的に質問で補ってください。

軽井沢の湿気カレンダー:梅雨だけでは終わらない

移住前のわたしは、湿気対策は梅雨の1か月ほど頑張ればいいと思っていました。実際は違います。

時期状態とやること
5月後半雨の日に収納の湿気が気になり始める。革靴・バッグ・布団の見直しと除湿機の準備はここまでに
6月中旬〜7月本格的な除湿シーズン。除湿機の水が目に見えて溜まる。収納・洗面所・寝室を重点的に
8月避暑地としては快適な一方、湿度計は普通に70%台。「涼しいから」と油断しやすい時期
9月〜10月前半秋雨。平年値では9月が湿度89%と年間のピーク。気温が下がり、暑さではなく「布団や床がなんとなくしっとりする」湿気に変わる
11月以降湿気は落ち着き、今度は乾燥・結露・寒さ対策へ切り替え

盲点は9月〜10月です。数字の上では真夏よりも湿度が高く、しかも気温が下がるので洗濯物も布団も乾きにくい。ジメジメという不快感が薄いぶん、対策の手を抜きやすい時期でもあります。**軽井沢のカビの季節は「6月から10月前半まで」**と考えておくのが実態に近いと思います。

そして冬になれば、今度は暖房で空気が乾き、加湿が必要になります。夏は除湿、冬は加湿。同じ家なのに、季節で真逆の管理が要る。この振れ幅の大きさが、軽井沢の住環境のいちばん面倒なところであり、住んでみないと分かりにくいところです。

それでも、軽井沢の夏は気持ちいい

湿気とカビの話ばかり書いてきましたが、誤解しないでほしいのは、軽井沢の夏そのものは本当に快適だということです。

朝、窓を開けると涼しい空気が入ってくる。日中も木陰は涼しく、夜はエアコンなしで眠れる日が多い。東京の夏から逃れてきた身としては、この気候だけで移住の価値があると感じる日もあります。

ただ、その快適さと、家の中の湿気は別の問題です。「涼しい=乾いている」と思い込んだまま暮らすと、革靴やバッグや布団が静かにやられていきます。逆に、湿度計と除湿機とすのこ、そして収納を詰め込みすぎない習慣。このくらいの備えで、湿気は十分に付き合える相手になります。

軽井沢の冬が「準備が9割」なら、夏の湿気は「湿度管理が9割」でした。冬の寒さとあわせて、軽井沢の一年の暮らしを立体的に知りたい人は、冬のリアル移住に向いている人・向いていない人もあわせて読んでみてください。


※ 湿度の数値は気象庁の平年値(1991〜2020年)を参照しています。カビと湿度の関係は文部科学省のカビ対策資料、室内湿度の目安は建築物環境衛生管理基準、電気代の目安単価は家電公正取引協議会の公表値(31円/kWh)によります。わが家の湿度や電気代の記載は、住宅の条件や年によって変わる一家庭の体験です。情報は2026年7月2日時点のものです。