「いきなり移住は怖いから、まずお試しで住んでみたい」——軽井沢移住の検討で、とても健全な発想だと思います。
ただ、最初に答えを言っておきます。軽井沢町には、町公式の「お試し移住住宅」や「移住体験制度」はありません(2026年7月時点。町公式サイトと長野県の移住ポータルで確認)。長野県が11年間続けたお試し移住支援「おためしナガノ」も、令和7年度(2025年度)で終了しました。古い記事にはまだ「おためしナガノを使おう」と書かれていることがあるので、注意してください。
では、お試し移住はできないのか。そんなことはありません。不動産会社のシーズン貸し、通年営業の貸別荘マンスリー、周辺自治体(佐久市・小諸市)の補助制度を組み合わせれば、「お試し」は自分で設計できます。制度が無いぶん、設計は自分でやる必要がある——それが軽井沢のお試し移住の実態です。
わが家は2024年10月に東京から軽井沢へ移住しましたが、長期のお試し移住はしていません。移住半年前から家探しを始め、3泊4日の滞在を1回だけ挟んで、内見4〜5件で決めて飛び込みました。つまり、冬を体験する前に決めたわけです。結果的にはこの町を選んでよかったと思っていますが、住んで1年半以上たった今なら、「先にこれを試しておけば、もっと確度高く判断できた」と言えるものがはっきりあります。この記事では、公式情報で確認できる選択肢と、お試しをしなかった側の正直な振り返りの両方から、失敗しにくい段階移住の組み立て方をまとめます。
まず結論:知りたいことへの答え
| 知りたいこと | 答え(2026年7月時点) |
|---|---|
| 軽井沢町に公式のお試し移住制度はある? | ない。体験住宅・体験ツアーとも公式には確認できない。移住相談の窓口は町の観光経済課 |
| 県の「おためしナガノ」は使える? | 終了(令和7年度まで。2026年度の募集なし) |
| 代わりに何を使う? | 不動産会社のシーズン貸し(1〜3ヶ月)、通年営業の貸別荘マンスリー、マンスリー物件、多拠点サービス、ホテル連泊 |
| 周辺自治体に制度は? | 佐久市:試住サービス「Shijuly」+滞在費の一部補助/小諸市:宿泊助成(1泊5,000円・年25,000円上限)/御代田町:お試し制度なし(移住相談は随時) |
| 冬に試せる? | 試せる。冬シーズン貸しの物件や通年営業の貸別荘があり、冬は閑散期で賃料が下がるため、むしろ狙い目 |
| Airbnbでお試しは? | おすすめしない。町は民泊を認めない方針を公表している。使うなら旅館業許可のある一棟貸し・貸別荘を |
| 一番大事なことは? | 夏だけ見て決めない。試すべきは「冬の朝」と「観光シーズンの生活」 |
公式制度の現状:軽井沢に「ない」、周辺に「ある」
軽井沢町:制度はないが、相談窓口はある
軽井沢町には、自治体が運営するお試し住宅や移住体験ツアーは確認できません。長野県の移住ポータル「楽園信州」には約30自治体のお試し住宅が載っていますが、軽井沢町の掲載はゼロです。移住相談の窓口は町の観光経済課(0267-45-8579)が担っています。
これは「軽井沢が移住者を歓迎していない」という意味ではなく、放っておいても人が来る町だから、と考えるのが実態に近いと思います。いずれにせよ、軽井沢のお試し移住は民間サービスで組むのが前提になります。
佐久市・小諸市:制度があるので「広域お試し」に使える
一方、隣接エリアには公的な支援があります。
- 佐久市「Shijuly(シジュリー)」:市内の宿泊施設や物件を使った1〜2週間程度の「試住」を市が案内する仕組み。あわせて移住検討者向けの滞在費補助(宿泊費・交通費などの実費の2分の1以内・通算6日分まで。宿泊は1人1泊3,000円上限など。GW・年末年始は対象外)が2026年度も実施されています
- 小諸市:県外在住の移住検討者向けに、市内宿泊の助成(1泊5,000円上限・年度内25,000円まで)。ただし事前に市への移住相談実績が必要で、宿泊3日前までに計画書を出す方式です。以前あった移住体験施設「やまぼうし」は閉鎖中です
- 御代田町:お試し住宅はありませんが、移住相談はオンライン・対面で随時受け付けています
軽井沢が本命でも、御代田・佐久との比較は多くの家庭が通る道です。佐久や小諸の制度で拠点を安く確保し、そこから軽井沢の物件や生活動線を見て回る——広域で考えると、公的制度も使えるお試しが設計できます(制度の条件・金額は年度で変わるため、必ず各市の最新情報を確認してください)。
民間でお試し滞在を組む:手段別の整理
軽井沢町内で1週間〜数ヶ月住んでみる手段を、公式情報で確認できた範囲で整理します。
| 手段 | 冬の可否 | 期間の目安 | 相場感(確認時点) | 向いている使い方 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産会社のシーズン貸し | 可(「冬シーズン貸し」物件あり) | 1〜3ヶ月 | 月9.8万〜100万円と幅広い | 選択肢が最も多い。家具付き・定期借家契約 |
| 貸別荘のマンスリープラン | 施設による(通年営業の施設あり) | 1ヶ月〜 | 閑散期(2・3・10・11月)月30〜40万円、繁忙期(7・8月)月55〜70万円+初期費用の例 | 「別荘暮らし」を試したい人。冬は繁忙期の半額程度になる例も |
| マンスリーマンション | 可 | 1ヶ月〜 | 月27万円前後 | 町内の供給は実質ごくわずか。「都市型マンスリー」は期待しない |
| 多拠点サービス(ADDress等) | 可(暖房設備は要確認) | 数日〜 | 月額プラン制 | 1週間程度の「軽いお試し」の入口。軽井沢と佐久に拠点あり |
| ホテル・旅館の連泊 | 可 | 3泊〜2週間 | 時期により大きく変動 | 最初の下見・ワーケーション兼用 |
ポイントは3つあります。
1つ目。軽井沢のお試し滞在は「貸別荘・戸建て型」が主役です。 都市部のようなマンスリーマンションの供給はほぼなく、家具付き戸建てのシーズン貸し・マンスリー貸しが受け皿になります。家族・犬連れにはむしろ好都合で、移住後の暮らし(戸建て・車・冬の設備)に近い環境を試せます。
2つ目。冬は「試せないシーズン」ではなく「安く試せるシーズン」です。 貸別荘の中には通年営業でマンスリープランを持つ施設があり、公式料金を見ると冬を含む閑散期は繁忙期の半額程度まで下がる例があります。冬季休業する施設もあるので通年営業かどうかの確認は必要ですが、「冬に安く借りて、いちばん厳しい季節を体験する」は、コスト面でも理にかなっています。
3つ目。Airbnbでのお試しはすすめません。 軽井沢町は「民泊施設の設置は認めません」という方針を公式に掲げており、規制はさらに強化の方向で議論が進んでいます(2025年に町長が県へ要望)。町内で合法的に営業している短期貸しは、旅館業の許可を持つ貸別荘・一棟貸しです。予約サイトを使う場合も、許可を明示している施設を選ぶのが安全です。
何を「試す」べきか:お試しなしで移住したわが家の反省
ここからは、制度やサービスの話ではなく、「お試し期間で何を確認すべきか」です。わが家のお試しは、家探しの途中に挟んだ3泊4日の滞在1回だけ。その滞在は生活動線の確認にはかなり役立ちましたが、冬を見ないまま移住したのは事実で、結果オーライだったと思っています。1年半住んだ今、移住前の自分に「これを見ておけ」と言うなら、次の5つです。どれも、夏の旅行ではまず分かりません。
- 冬の朝。氷点下の朝に、車の霜取りをして、凍結した道を走って、保育園や駅まで行けるか。暖房を切れない家の光熱費(わが家は冬の電気+ガスで月5万円前後)に納得できるか。冬のリアルに書いたとおり、軽井沢の冬は「準備が9割」です
- 観光シーズンの生活。夏やGWの渋滞の中で、スーパーへの買い物や日常の移動がどれだけ時間を食うか。夏の湿気も、住んでみて初めて効いてくる要素です
- 通信と仕事環境。リモートワーク前提なら、滞在先でスピードテストを回し、物件エリアの回線事情を確認する。わが家は本契約の光回線開通に2ヶ月弱かかりました(リモートワーク移住のリアル)
- 車の動線。スーパー・病院・駅・園まで、実際に自分で運転してみる。「車なしでいけそうか」の答えは、3日も暮らせば体感できます
- 家賃と物件の現実。お試し滞在中に、実際に賃貸物件を2〜3件内見してみる。ポータルで見る軽井沢と、現地で見る軽井沢はかなり違います(賃貸のリアル)
逆に言うと、この5つを確認できる時期と長さで滞在を設計すれば、お試し移住の目的はほぼ達成できます。
段階移住の設計:4ステップ
以上を組み合わせた、現実的な段階設計です。全部やる必要はありません。大事なのは「冬を見てから決める」の一点で、そこさえ守れば順番は柔軟でいいと思います。
| ステップ | 時期・長さ | やること | 使う手段 |
|---|---|---|---|
| STEP 0:二季の下見 | 夏と冬に各2〜3日 | 夏の混雑と冬の朝を両方見る。冬は平日の午前に物件エリアを歩く | ホテル連泊。佐久市・小諸市の補助が使えれば活用 |
| STEP 1:短期お試し | 1〜2週間 | 生活動線(買い物・車・通信)を実際に回す。賃貸を2〜3件内見 | 多拠点サービス、貸別荘、佐久市Shijuly |
| STEP 2:冬の1ヶ月 | 12〜3月に1ヶ月 | いちばん厳しい季節に普通に暮らす。光熱費の請求感覚をつかむ | 冬シーズン貸し・通年営業の貸別荘マンスリー(閑散期で安い) |
| STEP 3:通年賃貸で本移住 | 1〜2年 | 賃貸で住みながら、エリアと暮らしを確定させてから購入を検討 | 通常の賃貸契約(探し方はこちら) |
わが家のように、STEP 1を3泊4日に圧縮し、冬(STEP 0の冬側とSTEP 2)を見ないまま本移住に入る家庭も実際は多いですし、それで後悔するとは限りません。ただしその場合は、契約前の内見を冬にやる、暖房方式と断熱を必ず確認する、回線を物件ごとに確認する——お試しで確認するはずだった項目を、家探しのチェックリストに全部移すことが条件だと思います。
費用の目安も書いておきます。STEP 1の1〜2週間で数万〜20万円程度、STEP 2の冬1ヶ月は物件次第で10万円台後半〜40万円程度+光熱費。決して安くはありませんが、移住後に「合わなかった」と気づいてからやり直すコスト(初期費用だけで数百万円)と比べれば、保険としては安いというのが、飛び込んだ側の実感です。
よくある質問
軽井沢町に移住体験住宅はありますか?
ありません(2026年7月時点)。町公式サイト・長野県の移住ポータルとも、軽井沢町のお試し住宅・体験制度は確認できません。移住相談は町の観光経済課が窓口です。民間のシーズン貸しや貸別荘マンスリーで代替するのが現実的です。
「おためしナガノ」は使えますか?
使えません。長野県の公式発表によると、おためしナガノは令和7年度(2025年度)で終了し、2026年度の募集はありません。古い記事の情報に注意してください。
冬に短期間だけ住むことはできますか?
できます。不動産会社のシーズン貸しには「冬シーズン貸し」の物件があり、通年営業の貸別荘にはマンスリープランがあります。冬は閑散期のため、繁忙期より大幅に安く借りられる例もあります。ただし冬季休業する施設もあるため、通年営業かどうかは必ず確認を。
Airbnbでお試し移住してもいいですか?
慎重に。軽井沢町は民泊を認めない方針を公式に示しており、規制強化の議論も進んでいます。利用するなら、旅館業の許可を持つ貸別荘・一棟貸しであることを確認できる施設を選んでください。
お試しなしでいきなり移住するのはありですか?
ありです。実際、わが家も3泊4日の滞在1回だけで、冬を見ないまま移住しました。ただしその場合は、冬の内見・暖房と断熱の確認・回線の住所単位チェック・車の動線確認など、お試しで確かめるはずの項目を家探しの段階ですべて潰しておくことが条件です。向いている人・向いていない人で自分の適性も先に確認しておくと、判断の精度が上がります。
まとめ:制度はない。でも、設計はできる
軽井沢のお試し移住を公式情報で整理すると、結論はこうなります。
- 軽井沢町に公式のお試し移住制度はない。おためしナガノも終了
- 代わりに、シーズン貸し・貸別荘マンスリー・多拠点サービスで滞在は組める。佐久市・小諸市の補助も広域なら使える
- 試すべきは施設ではなく季節。「冬の朝」と「観光シーズンの生活」を見ずに決めないこと
- 冬は閑散期で安く借りられる、お試しに最適のシーズン
- お試しを飛ばすなら、その分の確認項目をすべて家探しに移すこと
軽井沢は、夏に来れば誰もが好きになる町です。だからこそ、判断の分かれ目は冬にあります。「夏に惚れて、冬に決める」——お試し移住の設計は、この一言に尽きると思います。
※ 本記事の制度・料金・営業情報は、軽井沢町・長野県・佐久市・小諸市・御代田町の公式サイト、および各事業者の公式情報(2026年7月7日確認)にもとづいています。わが家の体験(3泊4日の滞在のみでの移住・家探し・冬の光熱費など)は2024年10月の移住〜2026年7月時点のものです。補助制度の条件・金額は年度で変わり、民間サービスの料金・営業形態も変動します。利用の際は必ず各自治体・各施設の最新情報を確認してください。
